自社の製品が自社の他の製品とシェアを奪い合う共食い現象

蟹張り — 普段は海産物を扱っていないネットショップが、SOY 狙いで蟹を売って勝負を賭けること。嘘です。

「カニバリ」とは、英語の “cannibalization” の前半を切り出した和略語です。”Cannibal” とは人食い人種のことですし、カニバリズム(共食い、人肉嗜食)という言葉なら聞いたことがあるかもしれませんね。

これまで「自社の製品が自社の他の製品とシェアを奪い合う共食い現象」を主に意味してきましたが、EC で典型的なカニバリといえば、ネットとリアルの食い合いです。同じパイを食い合うので、結局、売上は伸びません。どちらか一方で安売りなどすると、むしろ利益の減少さえするおそれがあります。
共食い
そして、その恐怖に萎縮したり、リアル店員のモチベーションに配慮して、EC というチャネルを活かしきれない小売事業者も以前は見受けられました。ただ、それも地理的テリトリに立脚した一定の安定要素(競合との同条件の競争)があった時代の話です。

今は、手を拱いていると、逆に競合他社からカニバリの落とし穴に叩き落される危険さえ生じるのです。例えば、リアルとネットの立ち位置を経営方針として明確に定めない隙に、競合A社がネットで同じ商品の廉売を始めたらどうなるでしょう。慌ててネットに参入して泥沼の価格競争に突入すると、堅調だったはずのリアルの収益まで悪化させてしまいます。

観点を変えれば、先手を取られる前にカニバリを避けるオムニ・チャネル戦略を立案・実行しなくてはいけません。社内の競争は「切磋琢磨」であって、社外の競争は「生き残り」がかかっていることを忘れないでください。

では、どうしたらネットとリアルが共存・成長できるのでしょう?

やはり、それぞれの特性を活かした上で、シナジーを生むことしかありません。

一般に、食われる側と見做されるリアルを考えてみましょう。”Retailtainment” という言葉がありました。「リテール」と「エンターテイメント」を合体させたこの造語が生まれて十余年ですが、もっと古くからそういった要素は認められていました。

かつて、日本の全ての百貨店には屋上にミニ遊園地がありました。皮肉なことに、それらが姿を消すとともに、百貨店業界も下降線を辿ってしまいました。あそこで失ったものは、ウサギちゃんのカートではなく、「世代を超えて一緒に楽しめる時間と空間」だったのかもしれません。

遊園地

一方、百貨店に取って代わって強い集客力を得た大型 SC には、映画館やレストランも並んでいたりします。そこまでいかなくても、スーパーにだって「世代を超えて一緒に楽しめる時間と空間」はあるのです。あなたにも、試食のオバチャンにそそのかされて食材を買ってしまった経験ありませんか。

「目的買い」だけならネットでもいい気がしますね。象徴的にはロングテールです。

しかし、「衝動買い」にはリアルに一日の長があります。試食などは、衝動買いに外なりません。そして、衝動買いにはカニバリがない(増収増益を押し上げる力がある)のです。なので、試食コーナーを設けて、音と匂いのマネキン販売をしましょう。

もちろん、シズル感のない非食品にだって、衝動買いを誘う工夫はできます。「へえ、こんなのあるんだ」という発見こそ、衝動買いへの踊り場です。ただし、その場所へ来ていただかなくては始まりません。より多くの発見のきっかけを提供する動線は、実店舗マーケティングの歴史でもあります。

O2O とか、ゲーミフィケーション(gamification)とか、難しく理解する必要もありません。例えば、RPG は「すごろく」です。プレイヤ(買物客)は、新しいステージ(商品コーナー)でポイントをゲットしながら未知のアイテム(商品)を発見していきます。スマホを使った店舗内「リアルすごろく」で探索の好奇心やポイントに誘われて、衝動買いがその場で生まれたら最高ですし、できれば親子で楽しめるといいですね。

その場のおねだりは「わがまま」かもしれませんが、後日の入手は「サプライズ」にもなります(衝動買いから目的買いへの変質)。仮に、実店舗には再来店されず、家に帰ってネットで購買されたとしても、競合他社で買うのではなく、ポイントを使っていただければ大成功です。ただし、競合店でも使える仮想モールのポイントでは、シナジーがありませんけど。実店舗とネット本店のケミストリ(相性)がいい理由がここにもありました。

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