外飲み

「街の●●さんの多くが姿を消しました。なぜでしょう?」シリーズ 第2弾

  1. 街の本屋さんの多くが姿を消しました。なぜでしょう?
  2. 「街の酒屋さんの多くが姿を消しました。なぜでしょう?」

街の酒屋さんの多くが姿を消しました。なぜでしょう?

アマゾンができたから? 正解!

コンビニができたから? 正解!

しかし、他人も羨む「酒販免許」(正確には「酒類小売業免許」)という既得権益で守られた世界だったはず。なにしろ、家庭で作る梅酒でさえも違法だったのですから。大人になってから、ヒヤッとするエピソードです。

それが、規制が緩和されて様相が変わりました。街の酒屋さんを守る国会議員の会曰く、

市場活性化策であった免許制度緩和によって酒類販売場の増加に伴い過当競争が激化し、安易で安価な酒類の販売による飲酒誘引が横行し、酒販店は著しく影響を受けている。

「安易」というのは。あまりにも小売業をバカにした言い方に感じられますが。いずれにしても、何が緩和されたかというと、主に以下の通りです。

  • 2001年、距離基準(酒屋間の距離)
  • 2003年、人口基準(一定人口当たりの店舗数)

ただ、それで新規参入が増えたのなら、酒屋さんが姿を消すのは理に適っていません。

アマゾン犯人説を検証する

ここで酒販免許から卸免許を除いた、酒類小売業免許について整理しておきましょう。

一般酒類小売業免許 原則として、全ての品目の酒類を小売(通信販売を除く。)することが出来る酒類小売業免許をいう。
通信販売酒類小売業免許 2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として通信販売によって酒類を小売することができる。ただし、販売出来る品目は国産酒は地酒等小さな製造場で製造されたもの、または輸入酒に限られる。
特殊酒類小売業免許 酒類の消費者等の特別の必要に応ずるため、酒類を小売することが認められる酒類小売業免許をいう。

そう、通信販売酒類小売業免許(所謂、通販免許)が登場して、街の酒屋さんを脅かしたようです。

しかし、課税移出数量が 3,000 キロリットル以上の国内酒造メーカーが製造・販売する製品は、通販免許では扱えません。要は、大手ビールメーカーが生産した商品は売ることができません。通販に許されているのは、小さな酒造メーカーの酒と輸入だけなのです。

なんだか、アマゾン犯人説が怪しくなってきました。でも、amazon でビールを売っています。おやおや?

思い出してください。2014年は、大手 EC 事業者が「ゾンビ免許」を買ったことが話題になりました。

実は、1989年6月以前に取得された酒販免許には、「一般」と「通販」の区別がありません。つまり、古い免許があれば、実店舗でもネットショップでも、あらゆる酒を売ることができます。1989年に通販免許が制定されたからです。

皮肉にも通販免許は EC 事業者の望むものではなく、「ゾンビ免許」こそが『抜け道』だったのです。規制緩和と直接の関係はありません。ここでもまた、上記国会議員の主張に首を傾げざるを得ません。

コンビニ犯人説を検証する

もう一方のコンビニはどうでしょう。

なんとなく歩いているだけだと気付かないかもしれませんが、酒に飢えた輩が目を眇めて見ると、酒を扱っていないコンビニも多いのです。そう、酒屋から転換したコンビニが酒を売っています。看板が変わっただけです。

ただし、街の酒屋さんとの違いは一目瞭然、利便性で大差をつけています。

コンビニの利便性
  • 24時間営業
  • 食事や氷も買える
街の酒屋さんの利便性
  • 配達と回収をしてくれる(た)
  • 御用聞きをしてくれる(た)
  • 珍しいお酒も仕入れている(た)
  • アドバイスをしてくれる(た)

こうして見ると、コンビニの利便性は EC とちょっと似ていますね。EC の弱点としては、その場でお酒が手に入らないことですが、カクヤスさんのように大都市の一部地域に限って1時間以内配達も実現されています。

一方の街の酒屋さんの利便性ですが、配達と回収をしてくれたのは瓶の時代のアドバンテージ。缶が主流になって、「お酒」が軽くなり、酒屋さんに返しに行く習慣も昭和世代しか知らない有様です。物流の効率化が仇となったという観方もできます。

それでも、「三河屋のサブちゃん」ならではの御用聞きというアドバンテージは残ります。御用聞きは、IT 業界ではパーソナライゼーションと言い換えます。街の酒屋さんは、そのアドバンテージ、かつてあった競争力を今でも活かせているのでしょうか。

ソモソモ論、そして未来へ

  • 2000年: 9,519,513kl
  • 2012年: 8,537,587kl

市場規模の縮小

そもそも、規制緩和に関係なく、お酒の消費量が右肩下がりで減少を続けているのです。人口が減って高齢化しているのだから消費が減るのは必然です。これでは、競争が激化するのも自明です。

最後に、一番の原因と囁かれる「若者のお酒離れ」を検証してみましょう。

それには、「家飲み」と「外飲み」を分けて考えなければいけません。

家飲みは増えている

消費減少の全てが「外飲み」で、意外にも「家飲み」は増加していることがわかります。そして、古今東西、若者の「家飲み」量は年長者のそれを上回ります。「若者のお酒離れ」とは、「若者の外飲み離れ」なのではないでしょうか。

街の酒屋さんの一番の稼ぎ、実は飲食店でした。その飲食店への売上が激減したのが致命傷です。それに対して、EC の主戦場である「家飲み」は漸増しているのです。

結局、消費者のライフスタイルの変化が大きかったのです。街の酒屋さんは、飲食店に依存するあまり、その変化に適応が遅れたのかもしれません。それに比べて、EC 酒販業は首を垂れる理由などありません。適者生存を成したのですから。

EC は、コンビニの利便性を備えていることに加えて、配達を黒猫がしてくれるわけです。むしろ、先述の通販免許という制約があったが故もあってか、珍しいお酒の品揃えはできています。これにかつての「三河屋のサブちゃん」を仮想で叶えれば、明るい光が見えてきます。

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(補足)
本コラムでは話を分かりやすく単純化しています。実際には、「街の酒屋さん」がなくなった理由は他にもあります。コンビニ転換自体と、その淘汰もあるでしょう。なにより、後継者不足も深刻です。

(補足、その2)
「街の●●さんに競争力がないのはなぜか」シリーズでは、第三回は畳屋さん、第四回はお米屋さん、第五回は映画館を予定しています。予定です。ご一緒に考えてくださる事業者の方々も大歓迎です。

(補足、その3)
本コラムをお読みになった実際に酒販業(もちろん、EC でも販売)をしている方からご意見をいただきました。私たちは気づきませんでしたが、大きなヒントになると思いますので、ここに引用させていただきます。

酒は生鮮食品と同様です。
白物家電と違い、型番があるようで実は無いものです。
個別の状態は全く違いますから、それを見極めるのが酒屋の腕の見せどころのはずですが・・・
そういう専門店がこれからもっと増えて欲しいと思いますし、それが消費者へアピール出来る唯一の部分だと思います。対面のみならず、ECにおいてもそれは変わらないように思われます。

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