A子 「あー、可愛い。ねえ、それ、どこで買ったの?」
B美 「うん、これね、渋谷で買ったんだよ。」

ありそうな会話ですね。ここでポイントになるのは、店の名前が出てこないことです。仮に「マルキューで買ったんだよ」という返事があったとしても、テナント名まではなかなか出てきませんね。ネットで購入してたら、「ネットで買ったんだよ」という返事が予想できますよね。それくらい、ショップ名は語られないのが普通です。それで、リピーターになどなってくれるのでしょうか?

LTV が重要な経営指標として頻繁に聞かれるようになりました。そんな今だからこそ、誰も語ってこなかった EC の弱点を一つ告白しましょう。

物理距離の壁を越えるということは、固定客になってもらい難いということ

0-40ネット販売には『普段行けない』場所からでも買える長所のある一方、あえて『普段から行ける』という長所もないのです。言い換えると「近所だから通う」という理由がありません。

本コラムのサブタイトルは『続・なぜ「本店」を持つのか』にします。前章では『なぜ「本店」を持つのか』について、事業者目線で語らせていただきました。ここでは、買物客目線で「リピーターになりにくい」条件をおさらいしてみます。

リアル店舗とネットショップの一例をイメージしてみましょう。普段買い物に行く「行動範囲」としては、リアルなら徒歩や自転車で行ける範囲、象徴的には自宅から半径 1 km 以内だったり、最寄り駅の近傍です。ネットではポイントに囲い込まれている楽天市場でしょうか。店舗までの「道のり」は、リアルならランドマークや無秩序な道路の風景と「歩く」「曲がる」という運動です。ネットでは検索ボタンのクリックでしょう。リアルの道順は(嗅覚も含む)五感で覚えるのに対して、ネット検索は忘れてしまいます。これでは、ネットショップのリピーターになってもらいようもありません。

ネット本店(独自ドメイン)がブランディングをしやすいのは前章で語りました。ただし、それはデザインだけではありません。多くの店長が「本店へファンに来てもらいたい」と語るのには、表に出ない一つの理由がありました。

0-03実は、面倒だからです。なぜ、ネット本店がファンに来てもらいやすいのかというと、電車に乗って二つ先の駅まで行って、幾度も角を曲がって、やっと見つけた暖簾を潜り、欲しいものが手に入る感動エクスペリエンスが記憶に深く刻まれるからに外なりません。リアル店舗とネット本店の共通点です。

もし、総合ショッピングモールだったら、「ラクテンで買ったんだよ」の先にどれほどの記憶が残っているでしょうか?

もちろん、広告やフォローメールが大切なのは言うまでもありません。ただ、ネットの「地の利」の悪さを改めて認識すると、「遠くまでお越しいただいてありがとうございます」という、もてなしの気持ちが思い出されます。ネットだから忘れがちですが、リアルに学ぶ接客の基本ですね。買物客が贔屓にしてくれる理由ができました。